集い つながり ともに学び合いましょう

令和4年度松本市教育会長  坂口 克夫 (今井小学校)


 私の初任地は下伊那の山間地にある全校児童108名、職員数11名の小さな小学校でした。右も左もわからない私は、今思えば同僚の先生からすると、とても危なっかしい存在だったかもしれません。「先生」「先生」と子どもや地域の皆さんに言われるのですが、何をどう教えればよいのか、まるで分っていなかったからです。そんな私を温かく見守り育てていただけたこの三年間が私の原点になりました。

 五年生担任のK先生は私に教科指導について指導してくださいました。地域素材の教材化に興味を持っていた私に、この地の素材の魅力と指導の方法についてよく話してくださり、私のやる気に火をつけてくれました。K先生の指導に刺激を受け、私は地域素材を教材化し授業を試み、その実践をまとめ研究会で発表したことがありました。飯田東中学校の教室にたくさんの先生方が集まり、子どもの視点から、教材の視点から、そして教師としての視点からと多くのご意見をいただいた覚えがあります。それまでの自分の考えの狭さを感じた瞬間でもありました。

 このことがきっかけとなり私は、社会科同好会、地理研究会に入り多くの先生方と出会うことになりました。地理委員会では年に一回バスでの巡検があり、訪れたその土地に合ったくらしをしている人々の営みにふれ多くのことを学びました。また、研修の合間には、同行した先生方との世間話にも花が咲き、多くの先生方の温かなお人柄にふれる機会ともなりました。小規模の学校にいた私にとって心強い仲間がさらに増えた感じがしました。今思えば、学校を離れ、志を一にした他校の先生とつながりがもてたことは、自分にとって大変ありがたいことでした。

 

あれから30年余り、このような活動を継続してきたことで、知らず知らずのうちに多くの先生方に私は育てられてきたのだと思います。教師としての私の基礎基本をつくるうえで大変ありがたいことであったと思います。また、何よりありがたかったのは、学校を超えた同僚や先輩の皆さんとのつながりができて、多くの先生方の支えによりやってこられたことです。困ったときは、お互い様とお陰様でずいぶん助けていただきました。

 

さて、昨今、児童生徒は益々多様化してきています。目の前の課題に対応することで、手いっぱいになり、個人や自校のつながりのみになっているということはないでしょうか。一人や一校だけでは対応できないことが多くあります。コロナ禍で社会環境も急激に変化し、GIGAスクール構想も加速しています。学校や教員のあり方が見直されています。改めて我々自身が、共に学び、学校を超えてつながる意味は大きいと考えます。一人ではくじけてしまうことも、仲間がいれば頑張れる、一人では見えないことも、みんなで考えれば見えてくる。一流の講師のお話の一言が迷いの解決につながるかもしれません。

今こそご自身の求める学びに向けて共に集い、刺激し合い、学び合っていきませんか。教師としての専門性や人間性を磨く自主的研修の場が教育会です。先輩が創ってくださった学校の枠を超えて学び合える貴重な仕組みです。教育会では、コロナ禍においても先生方の学びを止めず、先生方がつながり合って、互いに磨き合い、協力し合い、助け合いながら教職員として成長していくことに寄与したいと考えます。また、会員の先生方の求めに応じた実りのある事業を創造していくことも大切だと考えています。今後も、児童生徒の前に誇りと自信を持って立つために、そして「夢と希望に輝く松本の子どもたち」の教育のために、集い、つながり、共に学び合っていきましょう。