令和2年度松本市教育会長  湯本 武司 (開智小学校)

新たな時代の教育を模索して

 ~ 新型コロナウイルスが教えてくれたこと~ 

松本市教育会は、「夢と希望に輝く松本の子ども」の教育のため、多くの先輩方が築き上げてきた歩みをさらに発展すべく、仲間と共に研究・研修を積み重ねてきました。

 しかし、昨年度末からの新型コロナウイルス感染防止により、通常の卒業式・入学式もできず、令和2年度もスタートした矢先、4月9日から突然の臨時休業。5月14日からの分散による登校日を経て、6月1日からようやく学校が再開されましたが、今も消毒作業に追われる日々です。教育会が大切にしてきた研究・研修も十分にできない状態が続き、同好会の事業も例年より大幅に縮小せざるを得ない状況です。例年夏休みに開催してきた松本市教育会定期総集会・教科等研修会(サマーセミナーに改称)も中止となりました。

こんな異常な事態が発生するとは誰も予想しなかったことですし、明治5年(1872)に学制が発布されて以来、初めての出来事だと思っていました。しかし、旧開智学校の学芸員遠藤正教さんから「大正時代に流行した西班牙(スペイン)かぜの時も今と似た状況だった」とお聴きし、大変驚きました。

 遠藤さんによりますと、開智学校の日誌には次のような記述が残っているそうです。

大正7年(19181026日:流行性感冒(インフルエンザ)にかかる児童多数あり、本日120名の欠席あり(後略)。1028日:川久保校医来校、今回全国流行の風邪につき取調べ運動会等の中止、其他種々注意する処ありたり。1030日:風邪の流行猖獗を極め、松商、松中は臨時休業。今回の風邪は全国一般にしてシベリア、アメリカ、欧州にも流行し世界的流行の現象を呈せり。111日:風邪にて児童職員の欠席多し児童の欠席平均2割強に及びたるを以て、校長市役所へ出張。市長及び川久保校医と協議。明2日は1時間限りとし、3日の日曜より10日の日曜日迄臨時休業をなすの止むを得ざるに至る(後略)。112日:第1時目に臨時休業中の注意をなし帰宅せしむ。既に風邪にて臨時休業をなせるは松商、松中、女師並びに附属、高女にて本日に至り全市各学校は臨時休業をなし、実に空前のことなりき」

 今から100年以上前にも、運動会が中止になったり、市全体が臨時休業にとなったりする事態があったと知り大変驚きました。まさに歴史は繰り返されています。私たちは、新型コロナウイルスの出現により、昨年12月まで当たり前のように行っていた通常の学校生活や社会生活が、どれだけ尊く貴重なものだったのかと痛感させられました。

 

 教育では、「不易と流行」という言葉がよく使われます。新型コロナウイルスのような病気との闘いは、人類にとって「不易」なものなのでしょう。明治以来日本が行ってきた集団による学習も、「不易」だと思われてきましたが、SNSの発達により今後は「流行」と言われる日が訪れるかもしれません。しかし、学校に集い友と語り合ったり、学び合ったりすることや、我々教師集団が仲間と集い、研究・研修を積んでいくことは「不易」なものであってほしいと心より願っています。教育会にとりまして、今年は「忍」の年ですが、来年「花開く」ための準備と受け止め、できることを一歩ずつ実践していきましょう。